先代と義理の関係だったからこそ

前回に引き続いて事業承継について話します。事業承継って、ネガティブな面もあればポジティブな面もあるんですけど、正直ドロドロだったなって思います。

やっぱり義理の親子だったのが良かった部分もあって、実の親子だったら遠慮がなくてもっと激しくぶつかっていたと思います。私の奥さんが先代の長女で、家族ぐるみでの承継だったんですけど、本当に離婚寸前までいくような激しいやり取りがありました。

奥さんと周囲の理解が支えだった

奥さんは私の妻であり、先代の娘でもある。板挟みになってすごくつらかったと思います。でも、彼女がいたからこそ解決できた部分が本当に大きかったですし、もう一つありがたかったのは、先代の時代からずっと会社に関わってくださってた方々の存在です。

両方の立場を理解してくれて、私の気持ちを代弁してくれたり、逆に先代の思いを教えてくれたり、本当に救われました。

承継スケジュールの壁と現実

先代は私を召喚したわけですけど、事業承継のスケジュールとか計画は全然なかったんですよ。

本人は「生涯現役」って言ってましたから。要は、死ぬまで自分でやるつもりだったんですね。それって継ぐ側からすると、めちゃくちゃ迷惑な話じゃないですか。仕事の引き継ぎもお客さんとの関係も株のことも、不動産の所有権も、全部一気に来るわけで。

建設業特有の大きなハードルと前例のない道

うちの場合、建設業なので特に事業承継のハードルが高かったです。免許が必要なんです。電気工事業、電気通信工事業、消防設備業。この3つの免許を引き継ぐには、当時は取締役として5年の経験が必要だったんですよ。私は3年しかなかったので、あと2年どうしようかと行政の先生と相談して、現場もやりながら管理部長的なポジションで運営に関わっていたという実績を積みました。

で、その2年分の実績を文書にして提出したんですよ。そしたら千葉県から「前例がないけどOK」って言ってもらえたんです。行政書士の方からも「こんな例は初めてです」って言われて。

いや、ホントに綿密に準備しないと通らないですし、何より会社としての事業継続に関わる話なので無計画では絶対に無理です。知り合いの電気工事会社でも、社長が亡くなって承継できず廃業した例もありました。

承継に向けた採用方針の転換

それと、意識して変えたことのひとつに採用方針があります。承継を見据えて、先代に提案して未経験者を採ろうって進めてたんです。

その結果、私より後に入社した社員が多く、昔ながらの番頭さんみたいな人は定年を迎えたりで、結果的にですが変な派閥も生まれず、社員みんなが理解あるスタンスでいてくれたんです。古参の社員も理解を示してくれて、本当にありがたかったです。

社長就任までの9年間

私は社長に就任するまで、丸9年かかりました。その間、現場で駆け回ってきたからこそ、社員のみなさんからも「こいつならやっていけるだろう」って思ってもらえたと思っています。

M&Aとかで急に社長が変わったり、文化がガラッと変わったりするより、ずっといい形で事業承継ができたなと感じています。

支えてくれた社員たちへの感謝

色々なことがあって、正直やるせない思いを抱えながらやってきたんですけど、振り返れば振り返るほど「ありがたかったな」って思うことばかりです。周りの人にも本当に支えられたし、状況も整えてもらえた。

今になって「良い思い出だったな」って変換できてるんですよね。事業承継で苦労されてる会社さんをたくさん見てきましたけど、うちの場合は本当に恵まれていたと思います。

ラジオが伝える大事な時間

これまでの話、なかなか社員には直接言いづらいんですよ。改まって話すことでもないし、新しく入った社員にいきなり話す内容でもない。

でも、ラジオっていう場があることで、私の気持ちとか過去の出来事も自然な形で伝えられる。実際に「ラジオ聞いてくれてるんだ」ってわかったとき、ああ、こういう形で発信するのって意味があるなと思ったんです。すごくありがたい場所ですね。

表も裏も見せていくということ

やっぱり表面だけを見せていくんじゃなくて、ちゃんとできていない部分も含めてリアルを出していきたいんです。それが会社を良くするためには必要なんじゃないかと。

社員にも伝えていきたいし、まだ資材として眠ってる良い部分を、内部を強化したうえで外にも発信していけたらって思っています。ラジオはそのためのすごく良い手段なんだと、改めて実感しています。

お互いに理解し合えてくると、もしかしたら私が何も言わなくなる日も来るかもしれないですね。でも、それもいいなと思っています。

それではみなさん、今日もご安全に。

話し手

勝谷 篤史

株式会社岡田電気工事代表取締役

義父が経営する岡田電気工事の事業承継のタイミングで業界未経験ながらも転身。現在は同社の代表取締役として皆様のお力を借りなからなんとかやっています。